頑張る理由がほしくて
2023.12.17
先輩に「お前は演出になりたいのか」と言われて以来、その言葉が強く意識の奥にこびりついてしまった。
今までは仕事でヘマをやらかさないようにだけを考えて必死に今日を生きてきた。
それが今ではある程度仕事にも慣れ、現場も前ほどは忙しくなくなった。
考える時間ができた。
だからこそ、今まで何度か言われたことがあったその言葉が刺さった。
「お前は今、何のために頑張っているんだ」と。
自分としては、以前時間があった際にちゃんとその答えを決めたつもりだったのだ。
「将来的には演出になる。しかし演出だけでは個性に乏しいので、強み として自分の好きなITを今はやる」
そんなプランを実は考えてはいたのだ。
制作でいる内の方がITを活かせる機会は多いし、スタジオを飛び回れるという点で演出の仕事にも繋がりやすい。無鉄砲な話ではない。
そして悩みながら文章を打っている今この瞬間でさえも、その夢と目標は大きくは揺らがない。
しかし。
しかしである。
今の僕には圧倒的に欠落したものがあるのだ。
「お前は演出になりたいのか」と言われた後の帰り道、同期からこんなことを言われた。
「お前がそういう目標を持ってるのなら、じゃあプログラムとアニメを繋げるんだって先輩にもちゃんと言えばいいじゃんか」
うーん……。
これが全くもって正論な訳である。
それに対して「ぐぬぬ……」としか言い返せなかった僕は思ったのだ。
あぁ、俺にはワクワクするような夢が欠けてしまっているのだなと。
「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」という映画をつい最近見た。
ミュージカルがメインの本作中で、メインの楽曲とも言える「Pure Imagination」という曲がある。
ウォンカの繰り出す不思議でワクワクする魔法と、それに見惚れる道行く人々。
心の奥が段々ムズムズしてきて、壮大なピアノの盛り上げと共に歌い上げられる「Pure Imagination!~♪」のサビで僕は思わず涙が出てしまった。
毎日がただ過ぎていく訳である。
シャカリキに働くでもなく。メンタルブレイクで人生のどん底に落ちるでもなく。上り坂も下り坂も無い道をオートマチックの車でひたすらゆっくりと走っていく。
焦燥感も期待感も夢も無いドライブは、あまりにも遅くてつまらない。
夢とか希望とかワクワクとかそんなありきたりな言葉を使うとどうも噓っぽい聞こえ方になってしまうけれども。
包み隠さず言えば僕はそれがほしい。
それこそクリスマスにウォンカのチョコレート1枚をとても楽しみにしていた少年のように、質素な生活の中に大きなワクワクを秘めた純粋な心のあり方を忘れないようにしたいものだ。